55日目

苫小牧某所〜川崎近海汽船

一ヶ月を越える長期戦となった北海道編も、今日で最後です。
いろんな気持ちが渦巻いて、言いたいことがまとまらない。
ただ一言いえるのは、北海道編は、まだ終わっていない。またいつか、再開します。
いつか、必ず。その日まで、しばしの別れ。


目が覚めれば、本州が待っている。旅は、まだまだ続く。



アルジャーノンさん宅で起床。アルジャーノンさんの出勤にあわせ、私も出発。

出勤か…。旅をしていると、普通の生活というのに憧れることもある。安定した毎日って、最高じゃん!だけど、不安定な毎日もまた、スリリングで面白いものである。

今日は夜のフェリーで移動の予定なので、一日余裕がある。なので、苫小牧市街をぶらぶら。といっても昨日の午後もぶらぶらしているので、そこまで見ることもない。
とりあえず苫小牧に来たからにはマルトマ食堂で海鮮丼を食べるべきだろう。アルジャーノンさんの計らいで家に荷物を置いていていいと言うことなので、バッグ半分のセミ装備で移動開始。向かってみると、平日の朝だというの行列が出てきていた。なんという人気!
待つこと数十分、ようやくありつけた海鮮丼。美味しいことは美味しいが、価格を考えると普通。とはいっても鮮度は抜群で、身はぷりぷりしてて美味しいよ。
その後、所用で郵便局に行って、駅前に戻ってくる。やることが無い。
本屋でしばし立ち読みして、喫茶店で休憩したりしてようやく昼。
午後からどうしたものか…。
とりあえずフェリーターミナルを下見。途中軽く雨に降られつつターミナルに着くが、あまりに閑散としていて「営業してるの?」と不安になった。分かったのはレストランがバカ高いということだけで、再び苫小牧市街へ戻る。
アルジャーノンさん宅に荷物をおいていたので、とりあえず回収へ向かう。が、場所を忘れる。しばらくグルグル回ってようやく発見。そしてフル装備へ。うん、落ち着く。出発前ピカピカに磨いたフレームも、気がつくとだいぶ年季が入ってきた。そうか、あれから55日。厳密に言うとこの日数のカウントも日本橋からなので、東京に来るまでの日数はカウントしていない。つまり約2ヶ月。こいつと走ってきたのか…。目立ったトラブルもなく、よく頑張ってくれている。
駅周辺をぶらぶらと散策。王子製紙の工場周辺を周るも、すぐに飽きる。東へ向かうとヤマダ電機があったのでウィンドウショッピング。iPad触っていて、これならブログ更新も楽そうだな〜と思ってしまう。でもiPad買うならMacBookAirかな〜?
近くに温泉があるので北海道の最後に入っていこうかと思ったが、入浴料がべらぼうに高いので、前のマックでコーヒーブレーク(とブログ記事書いたり充電したり)。安定のマック万歳。
充電が完了したところで移動開始。北海道最後の食事をしに向かう。
アルジャーノンさんオススメのスープカレー屋へ向かう。今日もご一緒させてもらうので、仕事が終わるまで近くの本屋で立ち読み。
アウトレットのベスト電器もあったのでなんとなく眺めていると、グーグルのネクサス7が目に入った。なにもアプリが入ってない状態で触ってみたが、悪くないかも。パソコンが出番がない割には重く大きいので、なんとか代替になるものを探しているが、タブレット端末ってのもいいのかもしれない。安いしちょっと心動く。パソコンでやるのはデジカメ写真のバックアップぐらいだし、どうだろう?いや、でもAndroidではitunesも動かないので、iPhoneの母艦にはならない。我慢我慢。
アルジャーノンさんと合流し、ラマイという比較的メジャーなスープカレー屋へ向かう。店内は結構おしゃれで、カレーと言ったら汚い定食屋のイメージがあるのでちょっと新鮮。
はじめて食べたスープカレーは、普通にうまい。普通のカレーと違って引っかかる感じがなく、名前通りスープのようにご飯が飲める。なので、大盛りを頼んだがぺろりと食べてしまった。煮込まれた大きな野菜なんかも好みで、素材の味が楽しめてよろしい。いや、これは普通に家庭で食べてもいいのではないだろうか?
その後フェリーの出航まで時間がある。再びアルジャーノンさん宅に戻り、北海道最後の時間を過ごす。




そして、時間がきた。



ヒンヤリとした夜の空気。吐く息が、白い。アルジャーノンさんに見送られ、北海道最後のサイクリングが始まった。アルジャーノンさん、最後の最後でこんなおもてなし、本当にありがとうございました。福岡に来た際は是非寄って下さいね!



北海道の夜は静かだ。自転車の音が、閑静な住宅街にこだまする。



なんとなく、出発前に自分のブログを読み返した。北海道に着いた、その日の記事を。
楽しそうな記事だった。これから起こる災難を知らずに…。

北海道では、何人の人と知り合っただろうか?10人?20人?いや、もっと、もっともっといっぱいの人と知り合った。失恋して旅している人がいた。犬を連れている人がいた。写真家の卵がいた、アウトドア好きの人がいた。同じように自転車で日本一周している人がいた。歩いて旅する人がいた。定年後の楽しみでバイクに乗っている人がいた。


沢山の人にあった。沢山の考えを知った。





そして、自分の弱さを知った。



旅って何だろう?人の数だけ旅があった。普通の生活では、「正しいこと」は決まっている。だけど、旅していると、すべてが正しいことで、間違っていることなんて無いのだ。


自分の…旅?


前に進む。ただそれだけが旅だと思っていた。それが正解だと思っていた。けど、そんなことはなかった。


旅は自由だ。


進むこともできる。止まることもできる。戻ることもできる。なんだってできる。それが旅だ。北海道は特に、それがやりやすい、できる環境が整っていた。
北海道を訪れるライダーの多くはリピーターだ。その理由が、よくわかった。



フェリーターミナルへ向かう途中、三日月型の飛行物体が見えた。UFOか!?と本気で思ったが、渡り鳥の群が、町の灯りに照らされて大きな物体に見えただけだった。渡り鳥か…。渡り鳥は毎年旅をしている。とても大変な旅を。同じ旅をするものとして、ちょっとした親近感が沸いた。
北海道で旅人とすれ違ったときと同じように、空に向かって手を振る。返事が無くてもいい。このサインに、何度助けられたことか。


最後のセイコーマートで明日の朝食を買い、フェリーターミナルへ到着した。大変お世話になったセイコーマートも本州へ行けばなくなる。旅が辛くなるな…。フェリーターミナルは昼に一度下見したので、手続きまでサクサクと済ませる。そのまま自転車に乗って乗船。船へ乗船するのには、きついスロープを登る。フル装備の自転車ではきついが、なに、この程度楽勝である。船員の人に自転車を預け、自転車とはしばしの別れ。二等船室へ向かう。
一番乗りなので隅を占拠。枕はあったが、毛布が無いのが意外だった。有料なのだが、普段キャンプ場で寝泊まりしている人間には無くても問題ない。
本州へ行けば、キャンプ場もなくなる。神奈川福岡編のように、道の駅と安宿がメインになるだろう。まあ、なんとなるだろう。ずっとそうやってきた。これからだって同じだ。
明日の予定なんて無い。着いてから決めよう。旅は自由なのだから。


船は北海道を離れ、本州を目指す。朝目覚めたら、そこは八戸だろう。正真正銘、北海道とはお別れだ。

決して楽しい思いでばかりではなかったが、さすがに別れは感慨深いものだ。うっかり船内に持ってきてしまったツーリングマップル北海道。くたびれた本のページをめくると、いくつものドラマが思い出される。


本当に、大変だった。


けど、完走していない。道東も網走、知床の辺りは走っていないし、道南は手つかずだ。何カ所もリベンジしたい場所もある。やり残したことは、たくさんある。


今回はお別れだけど、終わりじゃない。まだまだ北海道で「旅」をしたい。まだまだいろんな旅人に会いたい。まだまだ、まだまだだ。

今回ははっきり言って、負けたのだ。北海道の気候に。

悔しい?

悔しいさ!走りきれなかったのだから。






だから、北海道…


















次は負けないからな!