43日目


ある人にもらった、新しい翼。

辛いこともある。苦しいこともある。悩むことだってある。けど、これが私の人生。進みたい道。やりたかったこと。
人生は楽じゃない。"楽"しいことは"楽"じゃない。"楽"なのが"楽"しいじゃない。楽なのは、人生じゃない。だけど、人生は楽しい。
難しい人生だけど、最後にあるのはシンプルな死。だから、私はもっとシンプルに楽しみたい。
私の旅は、まだまだ、まだまだまだ続きます。



自分の悪いところは直そうと、大人になってからは強く思うようになった。社会人となりいろいろな人とふれあい、「いいこと」とは何なのか。「悪いこと」とはなんなのか。そういったことが分かるようになったからだ。
だから、もっと大人になりたい。年を重ねれば大人になるなんて思ったら大間違いだ。何もしなければ、人はいつまで経っても子供のままだ。
そう、例えば…。


昨晩のこと。昨日来たおばちゃん達(私の中でおばちゃんは敬語です)は、私と同じように炊事場とトイレの選択でトイレをとった。つまりそれは、私の隣にテントを張ることを意味した。まあそれはいい。
昨日のブログ更新後、ぬくぬくとして眠りにつこうとしていた。遠くから、鹿の鳴き声がする。木々のざわめきが、風の通る音が…。そして、おばちゃん達の声が。


騒いでいるわけではない。節度を持って、ヒソヒソと話しているだけだ。だけど、テントの距離が近いため、全部聞こえてしまう。ここはホテルじゃない。みんなが楽しむキャンプ場だ。節度を持って楽しむのはいいことだ。それを否定などしない。だがしかし、気になるのだ。


寝よう。起きたらきっと素敵な朝が待っているさ。


だが、一度気になりだしたら私はもうダメなのだ。寝よう寝ようと思ってもなかなか寝付けないものだ。結局、おばちゃん達が寝付く0時過ぎまで、起きていた。

そして、おばちゃん達の朝は早い。仲良く5時に起床。早く起きれたのはいいが、今日は移動日ではないのであまり意味はなかったりします。とりあえず朝のコーヒー誘っていただきありがとうございます。ほんと、悪い人たちじゃないんです。神経質すぎる自分が悪いんです。

そんなこんなで朝食を作るのだが、朝の冷え込みがスゴい。調理も凍えながらだ。コーヒーをたらふく飲んで体を温める。そしてお腹が緩くなる。逃げ込んだトイレの中は、とても暖かかった。
7時頃から日が照り始め、ようや夜露に濡れたテントも乾き始める。しかし今日は結露もあってだいぶ時間がかかりそうだ。ついでに寝袋も干し、その間に昨日奥まで行かなかった遊歩道の散策へ向かう。だいぶ歩き、森の向こうには木でできた展望台があり、登ってみるがそこまでいい景色ではなかった。
テントに戻り、荷物を撤収し走行開始。今日は天気がいい。いい景色が拝めそうだ。向かった先はサルボ展望台とサルルン展望台。駐車場に入ると目に飛び込んでくるのは木製の階段。これが傾いているし滑るし、なにより壊れてスリリング。どちらもやや遠く、軽いハイキングが味わえる。少し歩くがその分展望台からの眺めは良い!けど、たぶん晴れていれば細岡展望台のほうが良さそうだった。
晴れた釧路津源を拝み、そして釧路へ向け下ります。今日はある場所に寄りたいからだ。
塘路にあるとあるイタリア料理店。izzakieさんがオーナーを勤めるお店です。izzakieさんとは同じロードバイクに乗っているということでネットで知り合いました。細山製作所製のロードバイク、ブランド名QUARK。メーカー品ではないため、同じブランドの自転車はなかなか出会えません。そして、オーダーバイクなので同じ自転車は二つと存在しません。そんな、一台の自転車を接点とした間柄。ネットでは知っていても、直接お会いしたことはありませんでした。
お店の前に着いたものの、どうしよう?普通に入ればいい?入店と同時に「どうも亀猫でーす」なんて言ったら店内凍り付くよね?いやしかし、どうしたものか…。
とりあえず普通に入店。入店したものの、声はかけるべき?でも直接お会いしたこと無いわけで、けど声かけないとせっかく来たのに意味がない。そもそもお客さんが多くて忙しそうだし、無理に声かけるのは気が引ける。いや、ほんとにどうしよう…。
とりあえずパスタを注文。今か今かと来るか分からないタイミングを待つ。このまま何も無く帰ってしまうのだろうか?すると頼んでいないコーヒーが運ばれてくる。さすがに挙動不審で気づいてくれたようです。感謝!
食後、会計の際ようやく話す機会に恵まれました。けど、こういう出会いに慣れていない私は何を話せばいいか分かりません(>_<)。izzakieさんは仕事で忙しいなか、倉庫から使っていないタイヤを持ってきてくれました。私も倉庫を覗きましたが、そこにはブログの写真でしか見たことのない自転車達が!izzakieさんのQUARKが!そしてあの29erが!声には出さないがテンションは最高潮でした!
忙しいなか時間を割いていただき、本当にありがとうございました。次はQUARKで来ます!

izzakieさんからタイヤをいただき、リアにくくりつける。なぜだろう、どこまでも走れそうな気がした。実際テンションが凄いことになっていて、釧路まであっという間だった。タイヤが増えて重量増なはずだが、坂をぐんぐん上る。いつも以上に力があふれてくる感じだ。そんなテンション。釧路に着く頃にはガス欠でしたが。
釧路についてスポーツデポへ寄る。誰だよ、26x1.25なんて希少なサイズのタイヤとチューブ使っているの。頂いたタイヤは26x1.50なので、チューブを追加。チューブ一本1000円か…高いな…。予備を含め4本ほしかったが、節約して3本に。レジへ行くと、あれ?思ったより安いな。なんと今セール中で全品10%オフだったようだ。なに!?もっと買い物しようか!?…いや、節約節約。
今日も銀鱗荘で一泊します。手続きを済ませ、早速店先でタイヤの交換作業。はじめてのオープンサイドタイヤです。ゴムに覆われていないサイドウォールの取り扱いに戸惑いながら交換。ついでにブレーキシューも交換。これでまだまだ走れるぞ!
店先で整備していると、いろいろな人が出入りする。泊まるわけでもないのに、近くに来たからというだけでオーナーに顔を見せていく旅人。ここは愛されているんだな、と感じる。そして一台の自転車がやってくる。おお!チャリダーか!?しかもアンカーの格好いいクロモリバイク。ランドナーというよりキャンピングだろうか?ともかく格好いいぞ!その人とは相部屋となり、その日一晩をともにする。…一晩をともにするってなんか嫌らしいね。

整備終了後、慣らしついでにコインランドリーへ。走り出すとすぐに異音が聞こえた。ブレーキが擦っているのか?いや、ちゃんと調整してあるしな〜。原因はなんとリアフラッシュライトの台座。いままでギリギリ擦っていなかったが、タイヤが一回り大きくなったことで擦るようになっていたのだ。場所を調整するが、その際別の問題も発見する。センタースタンドが地面に届いてない。ギリギリの高さにして、2本の脚とタイヤで4点支持させていたが、タイヤが大きくなったことで高さが足りていない。これはまた明日にでも調整しよう。
洗濯を終わらせ民宿に戻る。コインランドリーでは100円を作るために600円使うという暴挙をしたが、気にするな。なぜ1000円使って500円の買い物したし…。
民宿に戻ると部屋は一人。相部屋の人は食事を頼んでいたので、食卓で食事中だ。パソコンを開いてブログでも更新しようとキーボードを打っていると、オーナーがやってきてすぐに降りてこいと言われる。やばい、なにかしたかな?と心配になりつつ降りると、いろいろと料理を振る舞われた。え〜!?ご飯代払ってないですよ!なんとサービスだとのこと。次は飯を頼めとは言われたけど。
チャリダーの人とオーナー、そしてもう一人で小さな宴会。その人は旅人ではなく、普通の人。4人でいろいろと楽しい話をしたが、考えさせられる話もした。
旅をする人、旅をしない人。いろんな宿に泊まったが話す相手は旅をする人相手だ。旅をしない人とは、あまり話をしない。旅をしない人は旅が嫌い訳ではなく、旅をしたいが、旅が出来ない人。いろいろなしがらみで、やろうと思っても出来ない。出たくても、地域から出ることの出来ない人。
私が高校卒業後、県外の学校へ行こうと思ったのは、地元から離れたかったからだ。なぜかは分からない。とにかく遠くに行きたかった。それは今でも同じだ。だからといって地元が嫌いなわけではない。福岡が好きだ。こってり脂の豚骨ラーメンは、食べていて「おえっ…」となるが、この世で最高の食べ物だ。私は福岡でも田舎の町で育った。どこまでも広がる田園地帯。整備されていない山。最近は中心部が栄えてきてだいぶ暮らしやすくなった。そんな故郷が好きだ。でも、一度そこから離れたかった。
もっといろんな場所を見たかった。もっといろんな人に会いたかった。だから、遠くへ行きたかった。
就職前、旅に出ようと思った。けど、実際問題資金がない。だから、一度働いて資金を集め、それから旅立とうと思っていた。つまり、仕事を辞めることは決まっていた。それが何年になるのかは分からないが、自分の中で仕事のノルマをもうけ、それらをやり遂げたら辞めようと決めていた。そして今年、それらを達成し旅に出た。
いろいろな人がいる。いろいろな考え方がある。やりたいことが出来る人。やりたいことが出来ない人。
難しい。本当に人生って難しい。けど、私はまだその難しさがよく分かっていない。ここまでこれといって困ったことはない。生まれてから今まで、予定調和の中にいる。だから、目の前で人生に後悔している人を見ると、どうすればいいか分からない。


やりたいことは、やればいい。


職場の先輩から教えてもらった、当たり前のこと。けど、この難しさも分かっている。私は生きたいように生きたい。やりたいことはやる。だから、旅をしている。旅をして、次ちゃんと就職できるかなんて分からない。分からないけど、就職"する"のだ。それが次に私がやりたいことなのだから。


難しい人生の話。次第に夜は更けていくのだった。