25日目

稚内のホテル〜稚内森林公園キャンプ場

つまり、嫌なら走らなければいいのだ。
朝起きて、思いついたこと。けど、それはそれで私の心が許さない。面倒な性格だ。
日本橋から始まったこの旅。宗谷岬まで、なんだかんだで走ってばかりだった。分かったのは、旅に不器用だということ。走るだけが旅ではない。走らない旅の楽しみを、もっともっと知る必要がある。


本文と関係ないことを少し。
佐渡島の写真をあまり公開しませんでしたので、チャリカメ成長記(9/19分の更新)のほうにどどーんと50枚以上公開しています。写真の出来はともかく、北海道ほど知られていない、その島の光景をご覧あれ。



昨日の話。稚内に戦略的撤退をしてからのことである。
なんとなく一人でまったりしたいので、久しぶりにホテルに泊まることにした。

○豆知識○
「ホテルは田舎ほど高い」

チェックインまでの時間つぶしにダイソーへ。イヤホンのイヤーピースが欲しかったが、イヤーピース単体は売っておらず、欲しければ100円のカナル式イヤホンを買うしかなかった。一瞬悩んで、ゴミを掴まされるぐらいなら買わないことにした。
変わりに買ったのはメモ帳とペン。最近アナログが恋しくなってきたのだ。

ホテルでチェックインをすませ、しばしまったり。雨にと汗で服がだいぶ臭ってきていたので、1キロほど先にあるスキルというコインランドリーへ向かう。あまり栄えていないので期待していなかったが、そこにあったのは場違いなほどちゃんとしたコインランドリーだった。服はもちろん布団や靴も洗える充実装備。洗えないのは人の心ぐらいじゃないだろうか?
洗濯乾燥機がメインだが、やや高いので安い洗濯機と乾燥機を別々に使用する。待ち時間に近くのセイコーマートで夕食をかって、食べながら待つ。布団が洗えるなら寝袋もいけるだろうか?寝袋と言えば、さすがに夏用寝袋ではこの先きつそうだ。他の人の寝袋はダウンのフカフカしたやつか、寝袋二重やシュラフカバーを付けていた。会う人会う人に「北海道を舐めるな」と言われているし、やはりシュラフカバーを買っておくべきだったか…。次の補給ポイントは紋別。そこで入手できればいいが…。
洗濯も終わり、すっかり暗くなった道を歩む。帰りにセイコーマートで夜食と朝ご飯を購入。しかしセイコーマートはコンビニだけど安い。地元にも欲しい。
ホテルに戻って就寝。やはりベッドはいい。沈むように眠る。いつもは夜に外的要因で何度も起こされるが、それがない。朝起きると、なんとなく体が軽い気がした。
朝風呂を浴び、出発の準備。そういえば旅レコのログを保存していなかった。パソコンに接続しデータを読み込もうとすると


GPS機器にデータがありません」


………






……










最後にログをとったのは、佐渡島から帰った日。つまり北海道に入って一度もログをとっていない。

北海道のログ、全滅!




ホテルをチェックアウトし、旅が再開する。今日も雨。風があまり吹いていないので、悪天候入門編のような天気だ。
昨日悩みが生まれたので、悩もうかと思ったが面倒なのでやめた。前に進みたくないので前に進まない。今日は稚内を満喫しよう。
ということでとりあえず日本最北のマック。三度目の来店か。
今日は何をしようか?ふと映画でも見に行こうかと考えた。稚内駅で上映中の映画を調べるが、うん、見るものがない。よし、今日はマックに居座るか。そんなわけで3時間以上居座る。朝飯も昼飯もマックでした。
その後ダイソーでいくつかの買い物。それからキャンプ場を目指すことにした。稚内森林公園キャンプ場は、ツーリングマップルに「自転車には辛い急坂」とかかれており、それはつまり「自転車は行け」と捉えるべきだろう。
さて、どんな坂が待っているのだろうか?自転車乗りは向かい風は嫌いだが、基本的に坂が好きなのだ。「坂」とか「峠」と聞いて、胸がキュンとするものである。え?私だけ。
そしてそこで見たのは「坂」だった。思い出すのは箱根峠。たしかに、普通の坂よりも急である。しかし、この程度の坂は佐渡島では当たり前にあったし、これ以上の坂も経験している。さあ、ヒルクライムをはじめよう。
これ以上の坂を越えてきたといっても、辛いものは辛いのだ。雨で路面が濡れており、力を入れると後輪がスリップする。全身の力を込めて坂を登る。いやー、坂っておもしろい!途中の展望台で小休止。そこから、稚内の町並みが見渡せた。一昨日寝た北防波堤ドームが見える。改めて上から見て、その大きさに気づく。それから少し登ると坂は終わり、頂上には風力発電のプロペラがあった。しかし今日は無風のため止まっていた。それからキャンプ場へ向かうが、キャンプ場からの帰りは楽だと思ったのが、キャンプ場へは急な坂を下った先だった。明日の始まりはヒルクライムからか…。
キャンプ場は広い斜面に作られており、平地を探すのに苦労した。というか、傾いているが気にしない。雨も降っているので手早く設営。すでにライダーがテントを張っており、会話しつつの作業となった。
設営後近くをふらふら。久しぶりにレンズを交換して撮影したが、曇っていた。ずっと雨なので仕方ないと思うべきか、保管方法が悪いと思うべきか。
テントの中で荷物を整理しいていると、雨がだんだんとヒドくなっていった。今夜も荒れそうだ。水を汲もうとテントから顔を出すと、鹿と目があった。



…鹿?



鹿である。結構近くにいた。刺激しないように水場に行き、刺激しないように帰る。なんでいるの!?ここ町中だよね?いや、山の中のキャンプ場だから、いてもおかしくないかもしれんけど。
さて、夕食である。前室で調理しようかと思ったが、近くに東屋がある。そこで調理しようと調理器具を運ぶが、そのときが一番の土砂降りだった。明かりがなく、雨で音が聞こえない。米を炊くのはコッヘルの様子が分からず少し難儀する。米を炊きカレーを食べる。自炊するとき毎回カレーだが、カレーは飽きない。銘柄を毎回変えているのもある。
食事していると、近くでテントを張っていたライダーさんがテントから出てきたので、話し込む。1時間以上、雨の中話し続けた。話していると雨も止む。それからもいろいろと話をした。
なぜ旅人同士は当たり前に仲良く話すことができるのだろう?旅人だということだけで、一瞬で打ち解けられる。不思議な人種であるが、嫌ではない。むしろこれが自然なのだろうか。
テントに戻り、ブログを更新する。



明日、再び宗谷岬にアタックします。天気はいい。体調もいい。あとは心の問題。けど昨日と違って、今は何に悩んでいたかがわからない。好きな道を走ればいい。好きで走っているのだ。
やっぱり私には同じ場所にとどまるのは、まだできない。前に進みたい。もっといろんな日本を見たい。だから、どうしてもガムシャラに前に進んでしまう。じっくりと旅を味わいたい。味わう努力もしたい。まだまだ不器用な旅だけど、いつかは大人の旅に仕上げたい。先は長い。明日から急に行動が変わると思えないが、少しずつでいいから、そんな旅にしていきたい。

あと、出発からようやく、目的地が出来ました。すべての「日本の端」を目指します。北海道の宗谷岬納沙布岬、鹿児島の沙汰岬、そして長崎の神崎鼻。なんとなく日本の外周を走るつもりでいましたが、道なんて無限にありますし、道は陸だけではありません。とりあえず、それらに到達できたら、今回の旅は成功、と考えることにしました。日本一周と言うより日本縦断だが、日本一周の定義がそもそも無いので言ったもん勝ちでしょう。などとホザいてみる。
なので、北海道も一周しないかもしれません。予想できる旅より、もっと奇想天外に旅してみるのも楽しいかも、と、思いだしたのだった。