38日目

レストラン「ぽんと」〜緑が丘森林公園キャンプ場

すっかり住み慣れたライダーハウスを後にして東へ向かう。天気こそ晴れないが、気持ちは晴れている。
けど、北海道の厳しい現実は容赦なく襲いかかるのだ。

Facebook版も更新を始めたので、実名を知っている人はどうぞ。



どうしても、別れは苦手なのだ。

気持ちのいい晴れ間を期待していたが、残念ながらグレーの空。でも、風も穏やかで、走りやすいだろう。

出発の準備をするが、なんとなく腰が重い。みんなとの会話も、なんとなく切ない。また、一人の旅が始まる。


旅は一人だけど、孤独ではない。


孤独さで言えば、旅をする前のほうが孤独だったような気がする。旅をしていないときは、自分と他人とは大きな壁があった。でも、旅をしていると他人が他人ではなくなる。自分と他人との間の壁が無くなり、ただ、一人の「人」として接することができる。
フェリーで出会った高齢の登山家が、なぜ山に登るのかの問いに「本来の人間になれるから」と答えたのを覚えている。最近になって、その言葉の意味が少し分かるようになってきた。

たった二晩。けど、みんなとは何年も一緒だったような、そんな気がしてしまう。だから、見送り、見送られるとき、とても切ない気持ちになる。
オーナーに見送られ、背中で答える。目を見て別れると、泣いてしまうそうだったからだ。別れは、苦手だ。



摩周湖などを周るつもりだったが、天気が悪い。一昨日みたいに霧で包まれることは無さそうだが、こんな天気でお目にかかっても仕方ない。自分の目で見てみたかったが、なに、今日行かなければ干上がってしまうわけではない。今回が最後ではないのだ。それに、もう十分満足したから。


昨日は車であっという間に着いた摩周温泉も、自転車では遠い。やっぱりエンジン付きはけた違いに早いのか。けど、やっぱり私はこのスピードがいい。遅いけど、おかげで車で見逃す光景もじっくり見られる。いいんのだ、私はこのスピードで。
今日は時折日の差す程度の天気。しかし雲が晴れることはなく、逆に厚くなっていく。途中自転車に違和感を感じた。久しぶりだからだろうか?いや、タイヤの圧が減っているんだろう。休憩できそうな場所が無いので道の途中でポンピング。しかし思ったほど落ちてはおらず、80psiは入っていた。95psiまで上げたが、やはりここまで荷物があると空気圧には敏感だ。普段は少し低圧でマイルドな乗り心地を楽しんでもいいが、やはりリム打ちのリスクは普段よりかなり高い。その後乗り味は堅くなったが、明らかに段差でのタイヤの変形は減っている。90以上は維持しておきたい。
別海道の宿温泉しまふくろうで昼食。ここは足湯をしながら食事ができる。しかし到着時は暑かったので遠慮した。
今日は体調がいいのでまだまだ進める。が、根室の方に行くと泊まるところが少ない。先端まで行けばライダーハウスがあり、行けないこともないが、無理はしないでおこう。というわけで、今日の寝床は別海ふれあいキャンプ場にする。距離は30キロ。調子がいい(+追い風)ので、すぐに着きそうだ。というわけで、昼食後コーヒーブレーク。こういうところって明らかにドリップコーヒーなのに、なんでこんなに高いんだろうね。
そんなこんなで出発。天気が悪くなっている。でも雨が降るにしてもその前にはキャンプ場に着きそうだ。実際、2時前にキャンプ場前に到着。う〜ん早すぎる。まで移動できるが、検索してもいい位置にキャンプ場はない。根室までは微妙に遠いし、やはりここで宿泊しよう。その前にセイコーマートでコーヒーブレーく。グランディア美味しいです。
まったりしたところでキャンプ場へ。が、どうも様子がおかしい。管理棟へ顔を出すと、衝撃の言葉を投げかけられた。


「9月で終わっちゃった」


なるほど!それでテントが無いし、トイレも閉まってたのか!
いやいやいやいや!10月上旬に閉まる予定のはず。上旬だけど上旬すぎるだろ。どうやらもうすぐマラソン大会だから閉めたようだ。なるほど、それならしょうが…なくない。
代替のキャンプ場を教えてもらったが、距離にして30キロ。日没までギリギリか。しかし、根室まではさらに倍なので進出も難しい。
そのとき、道路標識に「中標津」の文字が見えた。そうか、中標津があった!中標津ではこの辺りで一番の町らしい。ここにはキャンプ場があり、そこは今月いっぱい営業している。そして、距離は20キロ。当初寄る予定だったが、風が北風なのでやめたのだ。ここなら行ける!
が、中標津への道は意外に険しかった。ひたすら登りなのだ。さらに天気も悪い。雨もぱらつき始める。なんとか中標津市街にたどり着いたのが4時。が、ここからが長い。田舎道と違ってちゃんと信号があるのでなかなか進めない。そして、ようやく緑が丘森林公園が見えたと思ったら、キャンプ場まで2キロの看板が。そして、その2キロはひたすら登り。遠いぜキャンプ場!
ようやく到着。こんな奥深くなので、はじめはどんな汚いキャンプ場なのか心配していた。が、思っていたのとは大きく違っていた。とにかく自然が近い。管理棟の周りにはリスや鳥が動き回り、その気になれば捕まえられそうだった。手続きを済ませ、テントを建てる。炊事場などもしっかりとしてあり、これで210円は安い。ちなみにトイレは水洗でコインシャワーもあり、そして共同コンセントもある。遠かったが、結構いいキャンプ場だ。そしてこんないいキャンプ場を貸し切りで使えるのだ。
日没が近いので手早く夕食を作る。米は吸水が待てないので久しぶりのパスタ。パスタは余裕があると思ったらもう200gしか残っていなかった。米も少ないし、主食もそろそろ補充しないと。
食事を終える頃には日も沈み、寝る準備にかかる。が、せっかくなのでバーベキュースペースでたき火をやってみた。
人生初のゼロからの焚き火。落ち葉と薪を集め、見よう見まねの焚き火開始。だが、全然燃え広がらない。葉っぱは一瞬で燃えて、なかなか薪には火が移らない。薪も湿っているからダメなのかな?
焚き火で悪戦苦闘していると、ライダーがやってきた。貸し切りだったキャンプ場もようやく二人か。その後、二人で焚き火に挑戦。二人とも初挑戦だ。

「着火材使うといいですよ」

と言われ、なるほど、その手があったか。というか常識なのだろう。個人的に昔の人はマッチ一本で焼き芋作っていたイメージから、ライター一本でできると思っていた。どうも、焚き火は一筋縄では行かないらしい。
非常用に持っていた固形燃料を使って燃やす。おーー!火が高く燃え上がる!薪が燃えている!
が、固形燃料が燃えつき、だんだんと火も小さくなっていく。落ち葉や細い薪を拾い集めに走る周るが、ついには鎮火。えーーー!なんで?
その後も何度も試すが、火は大きくならない。バーナーで炭を作ったりしてガスもかなり消費してしまった。行き着いた結論は、ちゃんとした着火材を使うことと、荒い網の上だと炭がすぐに落ちてしまうのでは?ということ。北海道の夜はすでに10度前半なので、焚き火でもして暖まりたかったが、残念。でもいろいろと勉強になった。どうしよう?焚き火台導入しようかな?
後片づけしテントへ戻ったのが9時過ぎ。かなり火遊びに夢中になっていたようだ。とにかく今日は寝よう。

明日こそは根室へ行きます。けど、ライダーハウスは閉まっているみたいなので、最悪野宿ですな。